ある産婦人科医の備忘録

産婦人科医の臨床、研究、考えについて

産婦人科医が膣分泌物のグラム染色をしてみる~細菌性腟症~骨盤内炎症性疾患~などなど

(引用:

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%A0%E6%9F%93%E8%89%B2

 

産婦人科医が自分でグラム染色をすることは自分の周りでは稀である.
稀というか,見たことがない.

 

初期研修医のときは内科でよく喀痰のグラム染色をしていました(懐かしい).

上級医に好きなだけやってよいと言われ一生懸命グラム染色していた.

(私が研修していた病院では自分でグラム染色する研修医も珍しかったよう)

 

さて、細菌性腟症の診断といえば

Nugent score

WHO診断基準

その外にもAsmel, Spiegelなど多数の診断基準がある.

依然とメジャーなのはNugent scoreではなかろうか?

 

Nugent scoreはグラム染色によりラクトバシラス、ガードネレラ、モビルンカスの割合でスコア化するものである.

現在の勤務先では細菌検査室に依頼すれば技師さんがやってくださるのだが,

夜間・当直ではやっていただけないので,自分でやるしかない.

なかなか忙しい診療環境で自分でやることは難しいのだが,
やれるときは自分でやった方がよいだろう.

 

グラム染色の手順はググればすぐわかる.

しかし,見慣れていないと細菌の種類は何が疑わしいのか迷う.

とくにガードネレラと腸球菌の判別に迷うことがある.

正直,この2種類の判別はどうしたらいいのかわからない.

腸球菌の方が丸い感じといったところだろうか?

しかし,ガードネレラもわりと丸いのである.

ああ難しい. 教えてください.

 

しかし,そこは突き詰めなくてもよいだろう.(←感染症の先生に怒られそう)

結局はラクトバシラスが少なくて,他の菌が増えていて,

貪食像などあれば,積極的に感染を疑う方向でよいだろう.

明確な菌種は培養検査に委ねる.

 

そして,婦人科臓器の感染は嫌気性細菌も含めた多種の細菌によるものが多いとされるため,グラム陰性桿菌,陽性球菌,嫌気性菌をカバーできる抗菌薬のチョイスがよいだろう.

 

軽症ならフラジール.

 

頸管,子宮,骨盤内感染まで考えるならオーグメンチン・サワシリン.

入院ならセフメタゾール, スルバシリン.

そしてクラミジアマイコプラズマのカバーでアジスロマイシン併用.

だいたいこの辺で上手くいく.

膿瘍形成している場合は外科ドレナージ.

 

産婦人科医なのでというと甘え?な感じになってしまうが,

概ね上記のようなやり方で私は診療している.

 

しかし,注意が必要な点を加える.

それはA群溶連菌やブドウ球菌である.

 

劇症型A群レンサ球菌感染症は特に妊娠中は重篤化,死亡に繋がるので可及的速やかに抗菌薬加療の開始が望ましい.

 

黄色ブドウ球菌では,タンポンの入れっぱなしなどによる,トキシックショック症候群による重篤化の可能性がある.

 

 

また、特殊なケースとして子宮内避妊具を入れっぱなしによる

放線菌感染症も覚えておきたい. 

これは子宮肉腫などと鑑別になることもあるので注意.

 

 

 

まとめ

・自分で膣分泌物のグラム染色をしてみよう.

 

・Nugent scoreは正確につけられなくても
 ラクトバシラスが少なくて,他の菌が増えていて,
 貪食像などあれば,積極的に感染を疑い治療を開始.

 

劇症型A群レンサ球菌感染症,
 黄色ブドウ球菌トキシックショック症候群
 は重篤化するリスクがあるので
 早急に抗菌薬加療を開始しよう.

 

若手医師による臨床技能・フレームワークまとめ

医師6年目に到達した自分がこれまでに学び、経験してきたことから

積み上げ、精錬した臨床技能・フレームワークまとめてみる。(大袈裟)

山, 自然, 高山, 風景, サミット, スイス

初期研修医のときにとある内科医から教えていただいたフレームワークが今も役立っている。

      フィジカル/メンタル/ソーシャルに分けて考えよ

というものである。

 

・フィジカル:

 これは臨床医なら言うまでもない、いわゆる病気をみる、というようなもの。

 バイタル、身体診察、検査、ADLなど。

 自分の専門分野ではない領域に関してはコンサルテーションを惜しまない。

 

・メンタル:

 精神疾患のみならず、患者の性格・思考・認知機能を含む概念である。

 心配性な方、楽観的な方などでかなり接し方、説明方法が変わってくる。

 

・ソーシャル:

 家族、家庭環境、経済状況、職業、地域制、宗教など。

 特に家族の性格や思考には注意が必要である。
 私は家族を含めて、広義の意味で”患者”だと考えている。

 そして患者のみならず、その時々の医療提供側の状況も重要である。
 例えば、人手でどれだけいるか、設備はあるか、夜間か、週末か、
 他の医療従事者のスキルや思考、方針も加味しなくてはならない。
 ここが中々難しく、かつ重要である。

 

そして、私はここに”コスト”も追加して考えている。

・コスト:

 金、時間、人員、労働力など。 「優先順位」にも多く関わる。

 コストが低い検査はなるべく惜しまないようにすべきと考える。

 その代表例が超音波検査である。超音波検査ほど身を救う検査はない。
 侵襲度も低く、自分でできれば人員も不要である。

 また診療にかける時間や優先順位を瞬時に判断していくことも現場では重要である。

 

 

具体的な例として、

心配性な方では検査をするハードルを下げることある。
検査を受けることで安心感を与えることは大切だと思っている。
思いがけない有害事象が発生したときの信頼度が変わる。
もちろん侵襲度が高く、明らかに不要な検査は行わない。
また検査にかかるコストも考慮する。

 

家族への説明も決して軽視してはいけない。
患者本人に説明したからOK、ではないのである。
家族までも理解と納得ができるようにすることが重要である。

 

 

また、私が常日頃重視しているのは医療安全的視点である。

患者を守ることに徹底することが己を救う。

そのためには上記の4要素(フィジカル/メンタル/ソーシャル/コスト)を意識した

抜けのない診療をすることが重要である。

また「適切なカルテ記載」「適切な説明」が必須である。

 

・カルテ記載

どんなにがんばって診療をしてもカルテ記載がなければ、無かったことになってしまうのである。医療訴訟において、カルテ記載が詳細で適切であることは、診療が適切であることの判断材料になっている。

後輩ができて、カルテ記載方法も正解があるわけではないので、意外と難しい分野だと最近は感じるようになった。

抜けが多いのは論外だが、詳細過ぎて冗長な記載をするのも良くない。少なくとも詳細さが重要な場面で長い分面を書くのでれば、ショートサマリーを設けるべきである。

また、意外と抜けがちなのが陰性所見の記載である。
陰性所見を記載することで診療の妥当性を示す場面は多々ある。
例 「●●の症状、所見がないので▲▲の方針とした。」

どんなに医学的に適切な診療をしていても、予想外の有害事象は発生しうるのである。
これは安全運転をしていても交通事故に遭うようなものである。確率の問題だ。
よって、私は今の時点で何の問題もなくても、仮に有害事象が未来に発生し、
その時に後方視的に診療録を見たときのこと考えてカルテ記載をしている。
またこの考え方は、カルテ記載のみならず、診察、検査、治療の方針を考える時にも
意識するようにしている。

 

そのような観点からは、患者の帰し方も重要である。
これは別の言い方をすれば、どのように説明したか、である。
よく「有事再診」という記載をみるが、これでは訴訟において説明不足と判定される。
また再診を入れていたとしても、しっかりと説明したことをカルテ記載すべきである。
「●●●のような症状が出現してきには、連絡・受診していただくようご説明した。」
というように具体的な内容を記載することが重要である。
日頃から身に着けておくことで抜けがなくなる。テンプレートを作っておくのも
漏れなくするためには重要である。

・患者、家族への説明:

ここで既に記載したが、「適切な説明(いわゆるムンテラ・IC)」も重要かつ
難しい分野の一つである。
起こり得る合併症、副作用についてはなるべく漏れなく説明をすべきであるが、
限られた診療時間では全てを網羅することは不可能なため、重要度の高いものから
優先して説明し、細かなものはパンフレットや添付文章を渡して、軽く説明するに
留めしかない。

カルテ記載と同様で詳細過ぎたり、優先度の低い説明をダラダラとするのも良くない。
患者にとって重要なことは何かを意識すべきである。たまに病態生理を詳細に説明している医師をみるが、多くの患者にとっては、それよりも重要なことが多々あるだろう。

また可能な限り、診療に方針における選択肢は提示し、患者、家族に決断していただくことが重要である。しかし、選択肢だけ提示し、患者や家族が悩み、困ってしまう例をみうけることは多々ある。選択肢は提示するが、医師として、患者、家族、社会の状況などを考慮して、これが最適なのではないかという考えを述べることは重要である。

上記した患者の帰し方においても、どのような場面では受診すべきと具体的に説明することが重要。

 

その他、重要なこととして

・身だしなみ(信頼度に関わる)

・適切に詳細な指示簿

・他の医療従事者に「●●と指示した。」というカルテ記載

・処方における禁忌、併用薬の確認

・アレルギー

なども基本だが、忘れてはならない。

 

 

既に記した通り、どんなに医学的に適切な診療をしていても、予想外の有害事象は発生しうるのである。有害事象が発生したときには、後方視的に妥当性が問われる。しかし、訴訟の場面では司法に判断が委ねられる。現場とは考えが解離するのである。
リアルワールドにおいて不確実性を考慮した意思決定が必要だ。

 

 

まとめ

・フィジカル/メンタル/ソーシャル/コスト 
 のフレームワーク診療

・適切なカルテ記載

・適切な患者、家族への説明

・リアルワールドにおける不確実性を考慮した意思決定

 

 

 

 

産婦人科専門医試験 2021年 学習法 

2021年8月29日 産婦人科専門医試験 2021年 受けてきました。 

合否はわかりませんが、学習法や感想を書いていきます。

勉強のイラスト「テスト勉強・男の子」

 

毎年のことなのでしょうが「難しい!」と感じました。

病理画像や癌関連遺伝子の辺りが特に難しかったです。

サルコペニア脂質異常症の目標値などプライマリケア的な内容も今までにない内容でした。

 

学習法:

①専門医筆記試験に向けた例題と解説集 補遺

②産科 婦人科 ガイドライン

③必修知識

を軸としました。

他には各種主要なガイドラインを参照しました。

感想、反省点ですが、

例題集の内容はちゃんと掘り下げて調べた方がよい。

過去問丸暗記では対応できない。

ガイドライン、必修知識は全体を目を通した方がよい。

しかし必修知識やガイドラインに書いてないようなことまで聞かれる。(数問ですが)

 

自分の学習期間は4か月でした。

4か月前 例題集を通す

3か月前 必修知識 ガイドラインを読む

2か月前 例題集の復習

1か月前 全体の苦手なところの復習

 

 

ご参考までに

 

※追記 必修知識の"図表やテーブル"からの出題が多いことに気が付きました。

    図の内容は全てチェックです!!

 

 

 

 

 

抄独会:34w~ 脳性麻痺のCTG解析/Fetal heart rate pattern in term or near-term cerebral palsy: a nationwide cohort study(Am J Obstet Gynecol. 2020 Dec;223(6):907.e1-907.e13.)

(抄読会の無い病院勤務のため,独り抄読会をと思い始めてみました.)

(解釈は個人の見解であり,誤りがあるかもしれません.その場合はご指摘ください.)

 

第1回目:脳性麻痺児の分娩時の胎児心拍陣痛図を解析した研究

 この領域で大規模なもので本邦から出ているものは近年ではなさそうなので

 大変勉強になりました.

 産婦人科トップジャーナルに本邦から論文が出ており注目しました.

 

 主な私の解釈,批判は青字にしております.

 

 

Fetal heart rate pattern in term or near-term cerebral palsy: a nationwide cohort study(Am J Obstet Gynecol. 2020 Dec;223(6):907.e1-907.e13.)

 

Known:分娩時の低酸素イベントは脳性麻痺の主因.

    CTG/胎児心拍に基づく分娩時の管理は脳性麻痺の予防において重要.

Unknown:CTGがどれだけ脳性麻痺を防ぐことに寄与するか不明.

     Phelan and Ahnの分類(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9524150/)は,

                   ①malpractice(医療過誤?)症例を集めている

      ②分娩前2時間のみしか解析していない

      ③筆者2人が一人づつ解釈している

     上記よりバイアスや制限がある.

 

目的脳性麻痺児の分娩時のCTG/胎児心拍の特徴を解析する.

   連続的なCTG/胎児心拍解析と大規模研究により上記のバイアスを克服する.

 

デザイン:観察研究 後方視 

     産科医療補償制度データベースを使用. http://www.sanka-hp.jcqhc.or.jp/

     比較,検定はしていないので記述的研究?

     → このような場合でも,コホートになるのか?(タイトルにコホートとある.)

 

対象:重症脳性麻痺/34w以降/5歳までに認定されている/ 01/2009-12/2014 /

   (ホームページが参考になる  

 http://www.sanka-hp.jcqhc.or.jp/outline/compensation.html#range

   除外:CTGが解析不適正なもの(バイアス)

   (42w症例も含まれておりterm/near termだけではない[細かい])

 

解析方法:胎児心拍を3人の医師が独立して解析.

     既報の5分類に当てはめる.(下図)(4番目が Hon's pattern)

     当てはまらないものは ”unclassified” とする

     

f:id:obstetrician:20210624141847p:plain

   脳性麻痺の主因についても解析.

    (常位胎盤早期剝離/臍帯因子/子宮破裂など)

 

結果:重症脳性麻痺 n=1593

    → 除外 ①記録不適正 n=370, ②34週未満 n=154

               →   n=1069を解析

    (記録不適正が無視できない程度に多い

  

   心拍異常分類の内訳:

   ①Bradycardai n=84 (7.86%) 入院時から徐脈

           ②NR-NR n=232 (21.7%) 入院時から所謂NRFS

   ③R-PD n=197 (15.6%) 入院時はRFSだったが急速(1時間以内)にseverePDへ

   ④R-Hon(Hon's pattern) n=170 (15.9%) 入院時はRFS,徐々(1時間以上)にNRFSへ

   ⑤R-R n=212 (19.8%) ずっとRFS ←想像より多い

   ⑥unclassified n=204 (19.1%) ←多い バイアスとなる.

    → 分娩時に低酸素イベントが起きている③,④が併せて30%程度

      分娩前からイベント発生している①,②も併せて30%程度

  

   解析者間の一致性(内的妥当性):

    ・全体 Fleiss' kappa 0.59  ←概ね妥当

    ・R-Hon  Kappa 0.47 ←低め!!

 

  脳性麻痺の主因解析:(全体の44%が特定できた. ←低い バイアスとなる.)

                       単一原因としているからか?

    ・常位胎盤早期剝離 31.9%

    ・臍帯異常 20.3%

    ・子宮破裂 5.50%

    ・臍帯脱出 5.29% 

     (これが臍帯異常に含まれないのはもともとのデータベースの特性?

    ・母児間輸血 5.07%

    ・不適切な器械分娩 3.38%

     以下諸々と続き・・・・・

    ・出生後合併症 17.8% ←新生児の要因は認定除外になるのでは?

  

   R-Honにおける脳性麻痺の主因:

     ・臍帯異常 29.9%

     ・常位胎盤早期剝離 20.9%

     ・不適切な器械分娩 13.4%

     ・子宮破裂 9.0%

     ・子宮 過収縮 頻収縮 3.0%

     ・臍帯脱出 3.0%

     ・FGR 3.0%

     ・母体の心肺停止? 1.5%

      以下諸々と続き・・・・・

     ・出生後合併症 13.4%

 

   胎児心拍異常5分類別の母児の特徴:

    R-Honにおいては

     ・初産 74.7% 他より高い

     ・帝王切開 30.6% 他より低い

     ・分娩誘発陣痛促進 72.4% 他より高い

     ・器械分娩 49.4% 他より高い

     ・子宮底圧迫 48.2% 他より高い

     ・無痛分娩 13.5% 他より高い

 

   全体における母児の特徴:

     ・帝王切開 44.0%

      ・胎児心拍を理由にした帝王切開 93.0%

       → 4割がNRFSで緊急帝王切開しているが間に合ってない

     ・双胎 2.53% ←双胎は違うetiologyなのではと個人的には思う 

     ・臍帯動脈血ガスpH Median (IQR) 7.12 (6.83-7.29)

                                ・pH >7.00  61.7%

     ・Apgar score 1min  >7  27.3%

                  ・Apgar score 5min  >7  38.4%

       → ガスやApgarが大丈夫なCPが多い印象

 

Strength:最初の包括的国家規模の研究. 

      脳障害発生のタイミングを反映した胎児心拍図の解析をした.

     上記の既報のバイアスを克服した.

 

Limitation:後方視であること.

            軽症の脳性麻痺へは適応できなかもしれないこと(一般可能性).

      脳障害のタイプや程度は解析していないこと.

      (現在MRI所見をあわせた研究がongoingとのこと.)   

 

結論:重症脳性麻痺では低酸素イベントが分娩時に発生するものが30%を占める.

   最大16%の重症脳性麻痺は,R-Honに注目することで防ぎうる.

 

 

批判的吟味(上記の青字を含む):
R-HonはPreventableなのか?
 
・解析者間の一致性(内的妥当性)において, R-Hon  Kappa 0.47 と低めである.
 重症脳性麻痺という結果を知った上でこの一致率である.
 実臨床においては,より解釈が別れるのではないかと推察される.
・胎児心拍図判読により脳性麻痺の予防可能性があるとするR-Honにおいて
 特にKappaが低いことは特筆すべきである.
 
・R-Honでは脳性麻痺に注意が必要なことについては同意できるが,
 具体的な介入方法,改善策は?
 
・胎児心拍図 R-Honについて:
 -Kappaが低いことからも判読の難易度,主観性が高いこと
 -1時間経って結果的にR-Honになるという後方視的波形なこと
 -特に初産,分娩誘発,器械分娩が多く,帝王切開が低いことからは
  帝王切開する程ではないという現場判断で経腟分娩を目指したら
  脳性麻痺になってしまったというストーリーが想像される.
  おそらく他のモニターよりも分娩時間が長いことが予想できる.
 -不適切な器械分娩が多いことからも経腟分娩を何とか行おうとした形跡がある.
 -お産の進行スピードを予想することは困難な場合がある.
  結果として時間が長期になってしまうことは多々ある.
 -脳性麻痺を防ぐために帝王切開による急速遂娩をするとして 
  どの程度の脳性麻痺が防げるのだろうか?
  逆に不要な帝王切開は増えないのだろうか?
  この辺の検討が今後は必要である.
 -R-Honではどの段階で急速遂娩が必要なのかは不明で,
  ここが実臨床において難しいところである.
 -日本でのレベル分類でも,レベル5なら迷わず帝王切開するが
  実際に迷うのはレベル3が持続したり,4が間欠的に出現するようなケースである.
 
『最大16%の脳性麻痺は,R-Honに注目することで防ぎうる』という結論は
  言い過ぎではないか?
・R-Honにおける脳性麻痺の主因で
 -不適切な器械分娩 13.4%は心拍図判読ではなく,適切な器械分娩の習得を目指すべき.
 -出生後合併症 13.4%は心拍図判読では防げない.
 -臍帯脱出 3.0%も防ぐことは難しい.
 -臍帯異常 29.9%は分娩前の超音波で精査することが重要.
 (CTG異常から判明するケースもあるが.)
 → 16%というのは言い過ぎである可能性がある.
   胎児心拍図に注目すること以外の方法も重要である.
 
・胎児心拍図で脳性麻痺の発生タイミングの特定の精度が不明,確率されていない.
 動物実験においてはイベント発生-心拍異常出現の報告は有名だが,
 ヒトにおいては不明である.脳性麻痺に至るタイミングを測るのは難しいだろう.
 R-Honにおいてどのタイミングで脳性麻痺を発症しているのだろうか?
 1時間以上かけて胎児心拍が悪化していくこのタイプだが,
  1時間経つ前に脳性麻痺を起こしている可能性もある.
 そして原因にもよるだろう.心拍図は原因に対しては間接的所見である.
脳性麻痺の原因によって胎児心拍図波形も異なってくる可能性がある.
 胎児心拍図だけでは限度があり,発熱,分娩時間,超音波や採血などの
 他の所見や検査との組み合わせが重要と考えられる.
 
 
他、
・胎児心拍図の記録不適正で除外となったものが多い. n=370 (23.2%)
 より管理が悪い,改善可能性のある症例が脱落している可能性がある.
 
・心拍図の解析の結果として, unclassifiedとなったものが多い. n=204 (19.1%) 
 
脳性麻痺の主因で解析できたものが全体の44%と低い.
 
・双胎例はetiologyが異なるため除外した方がよいのではないかと思う.
 
私の解釈まとめ
・reassuring症例や臍帯動脈血ガス,Apgarが問題ない症例でも
 想像よりも多い割合で重症脳性麻痺があることにハッとした.
・臍帯異常の割合が多いことからも分娩前のスクリーニングが重要である.
 この辺は共著者の長谷川先生の執筆物が参考になる.
・判読に主観性を伴ったり,脳性麻痺に対する感度や特異度の低いCTGに
 分娩管理の大きな部分を委ねている実臨床ではあらゆる葛藤を伴う.
・NRFSで帝王切開をしてもどれだけ脳性麻痺を防げているのかがわからないことが問題である.
・個人的には現代日本においては,NRFSによる帝王切開率が高くなるのは仕方がないと思う.
 

統計検定2級 合格へのロードマップ  

全くの独学で医療職の私が統計検定2級に合格することができました。

その過程を反省と共に振り返ります。

 

 

臨床医をしながらの勉強になりました。まず時間の確保が重要でした。

 

数理的な統計の勉強は約10年前であり、知識はほぼない状態でした。

しかし普段から論文を読んだりしているので、ある程度の記述統計や検定などの概念はわかっていました。

 

2021/3月後半から本格的に勉強を始めました。

完全独習 統計学入門 を読みました。

 t検定までの概念を理解することができました。

 検定というものについて腑に落ちる体験ができます。

統計学の時間 統計学の時間 | 統計WEB

   の通読をしました。 1回目はざっとで良いと思います。

 私は3周しました。

統計学演習 を一通りこなしました。

 わかっていたつもりの概念も実際に演習をすると丸でダメでした。

 実際に手を動かすことで自分の至らない点がわかります。

 これは1周しかできませんでした。

④公式の過去問(1冊分)を3周しました。

 1週目ではボロボロ(6割程度)でしたが、演習を重ねることで理解が深まりました。

⑤いわゆる赤本(統計学入門 (基礎統計学Ⅰ) は辞書的な使い方をしました。

 

 

これだけやれば約1か月半で合格できると思います。

 

結論から言うと①、②、④で十分かもしれません。

わからないとこはググれば出てきます。

 

私はCBT方式で受験しましたが、

やはりみなさんの言うように時間との闘いです。

わからないものは飛ばした方がいいでしょう。

私は90分間の時間いっぱい使いました。

 

最初の記述統計の得点源になる問題に癖があり、苦戦し、焦りました。

 

 

問題をやった人にはわかると思いますが、問題を解く上でのポイントいくつかまとめておきます。

 

・両側検定か片側検定か

・平均の推定においては 母分散が既知なのか未知なのか

・自由度は?

 

この辺が最初は混乱するので、腑に落ちるまで復習すべきでしょう。

 

私は統計については完全に独学です。

普段の仕事で統計を使う場面も全くありません。(臨床で)

数理的な統計の勉強も大学1年生以来です。

 

過去に戻れるなら、学生のうち、遅くても初期研修のうちに勉強しておく方が良いでしょう。早いに越したことはないです。

 

今後は準1級も目指してみたいですが、難易度が桁違いとのことであり

遠い未来になるかもしれません。

 

準1級よりも前に 産婦人科の専門医試験や論文執筆などやるべきことが、、、

 

 

論文を書くこと

先日、retrospective cohort studyで産婦人科では主要なジャーナルにアクセプトされた。ご指導いただいた先生のおかげである。

 

症例数が少なく単変量解析しかできなかったが、実はその症例数でも多変量を行ってみると有意差は出ていた。とは言っても加えられる変数の数も少ないため、こういう場合は難しい。

 

論文の構造や新規性があれば単変量でもアクセプトされるということを身をもって学べたのは良い経験である。

 

現在、新たな論文執筆の準備中である。データベース研究のため利用申請中である。

申請が降りたらすぐに始められるよう今の内から文献検索や文章構造を考えておこう。

 

 

 

10年ぶりの数学の勉強

最後に手書きの計算をしたのは約10年前 大学1年の教養課程である

 

数式を使用した統計の勉強を最近始めたが明らかに成長スピードの遅さを感じる

高校生徒の時は最も自信のある科目は数学であったのに

 

サボっていた自分が悪いのだが

大学生の時点で統計がこれほど重要かつ身近なものだと知りたかった

 

あの頃はゴールを知らずに勉強していた

 

目的地を意識しながら学習することの重要さをこの歳で知る

優秀な人たちはこのことを若い時から知っているのだろう