ある産婦人科医の備忘録

産婦人科医の臨床、研究、考えについて

初めての英語論文(症例報告)がアクセプトされた

タイトル通り

 

いままで和文の症例報告は執筆したことがあったが

今回初めて国際紙(Pubmed掲載)で症例報告がアクセプトされた

 

嬉しい反面とても時間がかかった

最初に論文を書いたのが約2年前である

やっと3つめのジャーナルで通った 本当に良かった

(IF:1.5のジャーナル)

 

身バレ防止のために?詳細な内容は書かないが

今回苦戦した原因:

・そもそも臨床的有用性としての売りが弱い

 (稀少性が前面に出過ぎた)

・適切なジャーナル選定が難しかった

 どの分野(臓器別)のジャーナルとするか難しい内容だった

・簡素に書けなかった

 

しかし、今回のようにあらゆる手を使ってアクセプトに結び付けるのは非常に良い経験になった

ご指導いただいた先生方のおかげであり、頭が上がらない思いである

このご恩は必ず返したい

医療統計の勉強

医療統計の勉強を始めたのはおそらく2019年4月頃か

これまで読んだ本は

 

・EZRでやさしく学ぶ統計学EBMの実践から臨床研究まで~ 

・みんなの医療統計 12日間で基礎理論とEZRを完全マスター! 

・みんなの医療統計 多変量解析編 10日間で基礎理論とEZRを完全マスター! 

・今日から使える 医療統計

・あなたの臨床研究応援します

できる!臨床研究 最短攻略50の鉄則

 

E-larnimgとして

健康医療評価研究機構のMAPも受講した

 

ある程度基礎は学ぶことはできたが

やはり実際に手を動かなくては上達はしない

 

2020年は初めて検定を要する論文を執筆し

投稿中である

 

今後も論文を書きつつ学習をすすめていきたい

 

統計の基礎知識も不足しているため

2021年はまず目標として統計検定2級を受けたい

2020年振り返り 2021年目標

森林, 道, 日没, 日光, 夕暮れ, 木, 森, 葉, 植物, フローラ, 田舎, 景色, 自然

 

2020年はコロナの年となった

大変な思いをした人々が今もなお居ることは言うまでもないが

色々なことがわかったり、進んだりした副効果もあった

 

医療従事者はこれまで使命感ややりがいドリブンで

過剰な業務をこなしてきた

 

今回のコロナの件で医療従事者を辞める人や目指さなくなる人は多いかもしれない

 

鬼滅の刃が流行った

映画も大ヒットした

他人のために自分を投げうってでも奉仕する美徳が描かれている

私も感動した 

目先の損得勘定のみで意識を支配されるのは虚しい

Giverでありたい

 

 

あえて書こう、切迫早産に対するリトドリン治療について EBM(experience based mediciene)

 あえて書こう、切迫早産に対するリトドリン治療について 

 

日本では数多くの施設で切迫早産に対して

①長期入院 ②安静 ③長期のリトドリン点滴 を行っている

果たして本当に正解なのであろうか?

 

もちろん早産は子供にとって避けるべき事象である

呼吸状態は悪くなるし、脳にとっても悪い影響がある

それを防ぎたいという思いは医療者は持っている

 

しかし、診療行為というものは

メリット:ここでは早産を防ぐ効果

デメリット:合併症、副作用など

のバランスをみて正当化されるものである

 

デメリット

ではまずデメリットから考えてみる

・長期入院、安静によるストレス

 大部屋であれば他人と24時間一緒に過ごすことになる 

 病院の美味しいとは言えない食事

 家族と離れ離れで過ごす悲しさ

これは単純に妊婦の精神状態が悪くなるというだけではなく

妊娠中の精神状態の悪化と児への悪影響の関連を示す報告もある*

また、寝たきりは血栓症のリスクである 

 

・リトドリン点滴の副作用

母体に対しては

①肺水腫(肺に水が溜まって呼吸状態が悪くなる)

②無顆粒球症(細菌やウィルスと戦う免疫を担う白血球が減少するもの)

③心臓や血管の疾患(心不全など)

④横紋筋融解症 筋肉が壊れる

高血糖 妊娠糖尿病のリスク

児に対しては

低血糖 重篤化するの脳障害を起こす

②高カリウム血症(硫酸マグネシウムと併用がリスク)

③喘息の有症率の増加

等が報告されている

 

最近ではこのような日本におけるリトドリン使用の母体有害事象の増加を示した報告がある https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31215479/

 

 

メリット

48時間の妊娠延長効果は認められている

 その48時間があれば

 大きな病院への搬送や

 児の予後改善のためのステロイドの投与ができる

 

しかし、あくまで48時間なのである 

もちろん個人差はあるだろう 

しかし個人差と言えど、100歩譲って、1週間以上の長期投与を支持するものではないというのが私の感覚である

 

これまでにわかっていることから考えればリトドリンの長期使用が正解とは言えないのではないだろうか?

では、なぜ日本ではこのようなスタイルの診療が当たり前のように行われているのか?

おそらくそれは今までの経験、慣例、伝統?から来るものだろう

EBM のEが Evidenceではなく Experienceになっているのである

 

 

もちろん経験も重要である 

しかし、使用を続けるのであれば、観察研究でもいいから効果を証明すべきではないだろうか?

経験だけでは不味いのである

 

雨乞い3た論法はご存じだろうか?

①雨乞いをした!

②雨が降った!

③雨乞いが効いた! 

結論 雨乞いは雨を降らせる効果がある

もちろんこの結論にほとんどの人が違和感を感じるだろう

 

でもそれが薬になるとなぜか結論を信じてしまうのである

①リトドリンを使った!

②早産ではなかった(正期産だった)!

③リトドリンは聞いた!

結論 リトドリンは切迫早産に効く

 

薬の効果を示すには 薬を使っていない人との比較が必要である

(細かいことを言うとそれ以外にもアプローチが知られてるが)

つまり、経験だけではなく、検証が必要なのである

 

 (最新の産婦人科ガイドラインにおいても症状が落ち着いた切迫早産に対してはリトドリンの減量・中止を検討するよう記載されている)

 

*妊娠中の精神状態と児の予後の関連

https://bmjopen.bmj.com/content/4/11/e004883

https://www.medscape.com/viewarticle/573947

 

 

産婦人科医の記録

 医師5年目、産婦人科医3年目となりこれまで学んできたこと経験したことを

いつか忘れてしまうだろうと思い これからは記録として残すために開設してみました

 

これまでのキャリア

卒業大学で初期研修を開始  NICUICU、循環器に興味を持ったが

学生の頃から最も興味のあった産婦人科で心肺停止妊婦の蘇生に立ち合い産科医となることを決意

 

後期研修は大学を離れ市中病院で開始

大学病院の勤務を経て

現在に至る

 

興味のある分野 周産期 疫学 メンタルヘルス 出生前診断