ある産婦人科医の備忘録

産婦人科医の臨床、研究、考えについて

臨床

医療における不確実性

医療と不確実なものであるという認識は医療従事者なら多かれ少なかれ持っているものだろう。 医療が対象にするものは機械ではなく人間である。人間は動物であり、自然である。意外とこの認識は薄いのではないかと思う。 ましてや非医療従事者には医療の不確…

妊娠36週 胎動減少 君ならどうする?

架空の症例. 今回が初回の妊娠. 32歳. 人工授精で妊娠成立. 既往歴なし. これまでの妊婦健診で特記すべきことなし. 胎児発育は正常範囲で推移している. 今は土曜日の19時. 一人で当直をしている. 妊娠36週の上記の症例の『胎動減少』の問い合わせが入った. …

抄独会: 絨毛膜羊膜炎による児の長期神経予後への影響 / Chorioamnionitis and risk of long-term neurodevelopmental disorders in offspring: a population-based cohort study(Am J Obstet Gynecol. 2022 Aug;227(2):287.e1-287.e17.)

第2回 Chorioamnionitis and risk of long-term neurodevelopmental disorders in offspring: a population-based cohort study (Am J Obstet Gynecol. 2022 Aug;227(2):287.e1-287.e17.) 産婦人科のトップジャーナルであるAJOGから 絨毛膜羊膜炎の児の長…

臨床研究において欠損値(NA)と非統計家が孤独に戦うには

欠損処理と聞いて苦手意識を持つ人は多いと思う. 欠損が問題になるのはわかるけど,具体的にどうしたらいいかわからない. そんな人と自分の備忘録として記す. まず欠損がなぜ問題なのかと、その対策法を理解するために 欠損のメカニズムの理解が必要である. …

産婦人科医が膣分泌物のグラム染色をしてみる~細菌性腟症~骨盤内炎症性疾患~などなど

(引用: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%A0%E6%9F%93%E8%89%B2) 産婦人科医が自分でグラム染色をすることは自分の周りでは稀である.稀というか,見たことがない. 初期研修医のときは内科でよく喀痰のグラム染色をしていました(懐…

若手医師による臨床技能・フレームワークまとめ

医師6年目に到達した自分がこれまでに学び、経験してきたことから 積み上げ、精錬した臨床技能・フレームワークまとめてみる。(大袈裟) 初期研修医のときにとある内科医から教えていただいたフレームワークが今も役立っている。 フィジカル/メンタル/ソー…

抄独会:34w~ 脳性麻痺のCTG解析/Fetal heart rate pattern in term or near-term cerebral palsy: a nationwide cohort study(Am J Obstet Gynecol. 2020 Dec;223(6):907.e1-907.e13.)

(抄読会の無い病院勤務のため,独り抄読会をと思い始めてみました.) (解釈は個人の見解であり,誤りがあるかもしれません.その場合はご指摘ください.) 第1回目:脳性麻痺児の分娩時の胎児心拍陣痛図を解析した研究 この領域で大規模なもので本邦から出ているも…

あえて書こう、切迫早産に対するリトドリン治療について EBM(experience based mediciene)

あえて書こう、切迫早産に対するリトドリン治療について 日本では数多くの施設で切迫早産に対して ①長期入院 ②安静 ③長期のリトドリン点滴 を行っている 果たして本当に正解なのであろうか? もちろん早産は子供にとって避けるべき事象である 呼吸状態は悪く…