ある産婦人科医の備忘録

産婦人科医の臨床、研究、考えについて

産婦人科専門医試験 勉強ペースは? 2023年はどうだった?

本ブログで圧倒的な閲覧数のある産婦人科専門医試験について!

試験を受ける人のイラスト(女性)

 

新年度が始まり忙しい中で夏の専門医試験がちらつき始めている方々へ。

皆様、大丈夫です。今本ブログに到達している時点で意識がちゃんとしている方々です。

 

さて、よく『勉強ペースはどんな感じでした?』と聞かれます。

私や周囲の人々は4月中には手に入る年数の専門医筆記試験過去問題・解説集を1周していました。

とりあえず1周することで雰囲気や相場観が掴めるでしょう。

余裕であった人は6-7月くらいまでは焦って勉強しなくても大丈夫かもしれません。

厳しかった方はギアを上げて取り組んだ方がよいでしょう。

 

また、『2023年の試験はどんな感じであったか?』については

最初の方の問題が非常に難しく、みな初手から心を折られたと言っておりました。

しかし、そこでめげずに淡々と最後まで解くことで合格につながるでしょう。

「自分がわからない問題はみなわからない」というポジティブな諦めが大切かもしれません。

ただし、「自分がわからない問題はみなわからない」の境地に至るには、それなりの勉強が必要です。

 

勉強法については関連記事も是非みてみてください⇩

obstetrician.hatenablog.com

 

obstetrician.hatenablog.com

 

obstetrician.hatenablog.com

医療における不確実性

ブラックの Swan Lake Rotoiti ストックフォト

 

医療と不確実なものであるという認識は医療従事者なら多かれ少なかれ持っているものだろう。

医療が対象にするものは機械ではなく人間である。人間は動物であり、自然である。意外とこの認識は薄いのではないかと思う。

ましてや非医療従事者には医療の不確実性を測ることは難しいだろう。司法でさへも医療の不確実性を十分に理解していないような判決が散見される。

 

我々医療従事者の仕事の大きなところとして、いかにこの不確実性を測り、それに備え、それを患者(時に同業者)に理解してもらい、共に意思決定していくかということがあるだろう。

 

まず医療の不確実性と言ってパッと思いつくところで言えばphysicalに関する

・個人の身体特徴 ex) 通常測ることのできない疾患遺伝子の有無など

・身体の変化

・疾患の発生

・疾患の経過

・医学的処置(薬剤投与や手術など)の効果、副作用、合併症

などだろうか。

特に産科領域で言えば胎児機能不全を予測することなど未だ困難である。

上記のような想定される不確実性の全てに備えること不可能である。

それぞれの事象に関する頻度の統計データはあるだろうが、全てが信頼性のおけるデータである可能性は低いだろう。そして、それら全て考慮に入れることは困難であるし、個別のケースに当てはまるとは限らない。

しかし、医療従事者はこれらの不確実性に対応することを国民から期待されている。

 

そして、医療における不確実性とは上記だけではない。

・患者の価値観、正確、志向

・患者の数

・医療資源の質と量 設備やマンパワー

・職場環境 上司、同僚、部下の性質

・他の医療従事者

・社会情勢

・医療供給

・法、制度改正

・自身の健康

などあらゆるものがある。

 

これらあらゆる変数が互いに影響しながら臨床が行われている。

我々は不確実性に対処することに努力をすべきであるし、それが仕事である。

しかし、改めて言うが人間とは自然であり不確実なことが起こり得るのである。医療従事者だけでなく国民や司法へもこの不確実性への理解を促進する必要があるだろう。

不確実とはリスクであり、恐怖である。ゼロリスクを望む心理的な反応は理解可能である。しかし、現実として、人間として社会で生きていく上で不確実性から逃れることはできないのである。なので、それに対応していく努力を続けるしかないのである。

明日車に轢かれるかもしれない。明日災害にあうかもしれない。それでも生きていくしないのである。

 

産婦人科系ジャーナルを読んでいて思うこと、危惧とか 【お気持ち】

無料 泣いている赤ちゃんのクローズアップ写真 写真素材

 

※お気持ちです

 

やや偏った考えかもしれないが、産婦人科系ジャーナルは内科・外科・救急などと比較するとプレイヤーの数が少ないせいなのか?論文の手法について疫学的・研究方法論的・統計学的に問題があるものが目立つような印象がある

 

まず論文を書く上で重要なこととして

Methodを読んでその論文を再現できるか?

ということがある

Methodにおける手法の記述の不十分さが目立つ

イントロが不必要に長く、Methodが不十分という残念なかたちの論文をみかける

 

また統計手法の誤りや結果の報告不十分が目立つ 主に傾向スコアを用いた手法に多い

最近はちょっと調べたり某GPT君に聞けばすぐに教えてくれて、なんちゃって傾向スコアマッチングみたいなのができてしまう

 

また査読においてもMethodに関わる問題はあり

Methodの手法をわかってないのに査読を受けて誤った指摘するReviewer

RCTしか許さんReviewer

など困ることが多々ある

 

モダンな研究者達にReviewerが対応できなくなってきているのではないだろうか

 

他にも、某ジャーナルはブラインドで査読プロセスを経たら再現性のあるアクセプトを(銃声)

Review Managerで作成したForest plotなどの図を画質を落とさずPowerPointで編集する方法

Review Managerで作成したForest plotなどの図を画質を落とさずPowerPointで編集する方法の備忘録です

(メタアナリシスを行って論文を書く初学者向けの解説)

 

Review ManagerでData and analyses内の特定のアウトカム

欲しい図のタブを押して画像を開く

保存ボタンでsvgとして保存

PowerPointで「挿入」からそのsvgファイルを選択

 

以上。

 

※逆に好ましくない方法

Review ManagerでData and analyses内の特定のアウトカム

欲しい図のタブを押して画像を開く

「コピー」のボタン

PowerPoint内でペースト

※この方法だと画質落ちる pngになってしまうから

2023年の振り返り → 2024年の目標

2023年の振り返り → 2024年の目標について

山, ピーク, 雲, 風景, 冬, 雪, 自然, トラウンシュタイン

 

1. 2023年はただひたすら論文を書いた

アクセプト5本(original article-first -> 3, letter-first -> 1, case-corresponding -> 1)
投稿中3本
投稿前作業中1本
な状況

奇跡的にコアジャーナル的なものにアクセプトされたのは運が良かった

手法的にも色々手を出せてよかった

そして2024はすでにoriginal article-firstがアクセプト1本あり

 

また初めてReviewerをやった 疫学系のジャーナル

 

2. 臨床ではオーベンになり、いろいろあるがなんとかやれていそうな雰囲気

教育は苦手ですが、なんとかやってる感じ 

 

3. 英語のお勉強 

英語については落ち着いたら記録をまとめたいが、TOEFLには本当に苦労した

TOEICもやってるが、全然楽である

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

2024年の目標 

受験 後悔ないように全力でやりたい

 

戦争・災害・事故・事件のニュースが絶えない

かなり暗い雰囲気だがそれでも止まることはできないのでなんとか工夫してやっていくしかない なるべくダサくない生き方しないととは思う

 

 

R studio with Github入門 R stduioを使って解析しているが他の言語、CUI、コマンド操作わからない初心者向け

R studio with Github入門

 

R stduioを使って解析しているが他の言語、CUI、コマンド操作?????

でもGithubをR studioで使ってみたい!!!!!

な方向けの記事です(<自分用のメモです)。

(本記事を参考にして生じた問題には筆者は責任を負いません。)

 

かなりざっくりした説明で、厳密には正確ではない表現もありますが実用上は問題にならないと思います. (本記事を参考にして生じた問題に対しては筆者はいかなる責任も負いません.)

また細かい解説は先人たちの素晴らしい記事にゆだねております

 

そもそもgitとgithubって別物だったんですね~みたいな状態から1日で構築できたので、だれでも簡単にできると思います

 

・git: コード、ファイル、プロジェクトの管理をするもの
    変更履歴が残る、前のバージョンに戻せる
    何度も修正を重ねる作業で便利
    

github: 上記の管理をリモート(ネット上)でできる
      他人や自分の複数の端末でそれらが共有できる
      大元のファイルから複数のクローン、分枝を作れる
      分枝それぞれの変更点を確認しながら統合できる
      チーム作業の効率化、精密化ができる

 

まず↓の素晴らしい解説動画を倍速でみて概要をつかみます

 

www.youtube.com

 

さらに、gitの専門用語がこんがらがってわからないと思うので下記のリンクで概要を掴みます

 

qiita.com

 

zenn.dev

 

zenn.dev

 

 

 

さて、お勉強は終わりにして構築していきましょう!

 

① gitをインストールします. 方法は下記を参照(Windows向けですがググればMac向けの記事もたくさんあります)

prog-8.com

 

gitforwindows.org

    

② githubに登録します. 

github.co.jp

 

③ githubの設定をします(設定方法は上記に同じリンクを参照ください)

【Windows】Gitの環境構築をしよう! | プログラミングの入門なら基礎から学べるProgate[プロゲート]

 

④ リモートリポジトリの作成 

  その方法も上記のプロゲートのリンク先にあります

 リポジトリとは? フォルダ 場所 だと思ってください
            色々ファイルを入れて共有するための場所です
 リモートリポジトリ: ネット上≒github上のリポジトリ
 ローカルリポジトリ: 普通の自分のPCの中のフォルダ、場所

 

⑤ SSHの設定

 SSHってなんだよ、となりますよね
  SSHは比較的に安全に通信を行うものだと思ってください
    これによってローカル(PC)とネット(github)がつながります 

この辺は深みにはまる必要はないです
 

SSHとは|「分かりそう」で「分からない」でも「分かった」気になれるIT用語辞典

SSHの公開鍵ってなに? - Qiita

 

 

ここまででgitのインストール、githubの登録・設定、SSHによるPCとgithubの連携ができました。

 

いよいよR studioでgit/githubを使う方法にいきます

基本的には下記のリンク先の記事が大変すばらしいので、そちらを参考にすればよいと思います

qiita.com

 

⑥ ローカルリポジトリの作成=普通にR projectの作成

  このときにgitを導入したことで下記のチェックボックスが出てくるのでチェックすることが大事

 

 

⑦ リモートリポジトリ github上でのリポジトリの作成

特に何も読まずに作成できると思いますが、わからない場合は下記のリンクを参照
基本的にPrivateでまずは作成ください

qiita.com

 

するとgithub上のリポジトリの中の画面で
「Quick setup — if you’ve done this kind of thing before」というボックスの中にURLがあると思います。※1

このURLでローカル≒PCとの紐づけができます。

 

⑧ R studioにおけるリモートリポジトリの設定

Gitというタブ → 下記の紫の枝分かれ

新規のbranchを作成します

ここで必要なのが上記のguthubで見ることができるURLです。※1

テキトーに名前をつけて上記のURLをコピペします

 

これでR studioのローカルとリモートの連携ができました

あとは好きなようにbranch作成、プルとかプッシュとかマージとかすればOKです

 

 

さて今度は、例えば自分の他の作業環境、例えばノートパソコン(デスクトップ)で上記のリポジトリにアクセスし作業する方法です。

これができると、今日デスクトップでやった作業をノートの方に反映させるという作業が効率化します。

 

⑨ ノートパソコン(上記の作業をしていない方の環境)の設定

でもgitのインストールと設定を同じようにします。

githubはすでにもう一つのPCでしているので、そのアカウントにログインすれOKです。

SSHの設定も忘れずに行いましょう。

 

⑩ ノートパソコンの方にリポジトリのクローンを作成する

 

私はわかりやすくGUI(ボタンぽちぽち)で作業したかったので、github desktopをインストールしました

docs.github.com

www.kagoya.jp

 

(今後逆に、ノートパソコン→デスクトップへ反映をする場合も必要なので、どちらの環境においてもgithub desktopをインストールしておきましょう)

 

 

そしてgithub上で、クローンをしたいリポジトリを開いて

code → open with Github Desktop を選択

ここでdesktop版が必要だったといわけですね

 

ダウンロードしたR projectを開くと、すでにこのリモートのリポジトリと連携されているというわけです。

 

 

これで同じプロジェクトをそれぞれ別の環境で行っても、その結果をgithubを介して統合することができるようになります。

さらにいつ、どのように変えたか、どこを変えたのかという記録と確認ができ精密性があがります。

 

 

まとめ:

・gitのインストール

githubの登録

SSHの設定

・リモートリポジトリの作成

・ローカルリポジトリの作成

・ローカルとリモートの連携

・複数の環境での連例

についてめちゃくちゃざっくりまとめました。

 

妊娠36週 胎動減少 君ならどうする?

白の美しい愛の誕生人々

架空の症例.

 

今回が初回の妊娠.

32歳. 人工授精で妊娠成立. 既往歴なし.

これまでの妊婦健診で特記すべきことなし.

胎児発育は正常範囲で推移している.

 

 

今は土曜日の19時. 一人で当直をしている.

妊娠36週の上記の症例の『胎動減少』の問い合わせが入った.

 

実は日中にも今朝からの胎動減少で受診し,別の医師が診察していた. 

そのときはエコーやCTGで異常はなく,帰宅となっていた.

カルテ記載をみると,

エコー:頭位,羊水量正常,胎盤に異常なし
    中大脳動脈RI>臍帯動脈RI
CTG:reassuringで張りなし

 

帰宅後も胎動減少が続いており不安であるとのことだ.

君ならどうする?

 

 ① 家で様子をみてください

 ② 腹痛や出血があれば受診してください

 ③ 今すぐに受診してください

 

 

 

 

私は③の選択をする.

例え腹痛や出血がなくても受診すべきだろう. 理由は後述する.

 

 

妊婦さんが不安そうな顔で診察室に入ってきた.

やはり胎動は感じないままとのことである. 他に症状はない.

 

どんな検査をしよう?

そしてどんな所見に注意すべきだろう?

 

まず経腹エコーで胎児心拍数を確認する.

心拍はあり概ね150bpmであり,大きな徐脈はなさそう.

頭からお尻までざっと見る. 目立つ浮腫,腔水や心拡大はない.

羊水量も正常で胎盤の血種など異常もない.

そして臍帯動脈や中大脳動脈血流を評価する. 
MCA-PSVは95cm/s.

ここまではさくっとできるだろう.

そしてBPSを評価する. 
点数がつかないほどに胎動をほとんど認めない.

 

次に胎児心拍図を装着してみる.

基線 154bpm, 基線再変動 5-6bpm, 一過性頻脈なし, 一過性徐脈なし

 

さて,

帰宅 or 入院 ? どうだろう

 

 

BPSからいうと入院すべきだろう.

念のため入院時にいつでも緊急帝王切開ができるように採血をした.

 

もう21時になってしまった.

次にどうすべきか?

 ① 今晩は経過観察とし,明日の朝のCTG再検

 ② 入院後すぐにCTG再検

 

 

 

BPSが低下しており,入院後にCTGを再検した.

基線 154bpm, 基線再変動 2-3bpm, 一過性頻脈なし,
軽度遅発一過性徐脈が出現している.

 

 

次にどうすべきか?

 ① 明日CTG再検

 ② 1-2時間後CTG再検

 ③ 連続CTG

 ④ 急速追娩

 

 

 

ここは意見がわかれるところだと思う.

①はまず無い.

②や③を選ぶ方もいるだろう.

私は④を選択する.

 

と書くと,適応が甘いと感じる方もいるかもしれない.

CTGのカテゴリーだけでいうと経過観察が許容される.

 

実は入院時の採血で私はAFPも測定していた.

AFPは3800 IU/Lであった.

これを見て何を思うだろうか?

まだピンと来ない専攻医の方もいるかもしれない.

 

 

内診では子宮口は閉鎖しており,経腟での急速追娩は見込めず,緊急帝王切開で娩出した.

 

Apgar score 5/7 (1/5min) 

臍帯動脈血ガス分析 ph 7.150

児の外表は蒼白であった.

新生児科に入院となり,採血でHb6.2 g/dLと貧血であった.

 

後に母体の採血でKleihauer testsは陽性であった.

 

さて診断は?

 

 

 

母児間輸血症候群であった.

 

母児間輸血症候群とは胎盤血管の破綻により胎児血が母体に流入し胎児貧血を起こす疾患である. 

神経学的障害,胎児死亡などを起こしうる.

 

 

 

あくまで私が作り出した架空の症例ではあるが十分にあり得るシナリオだろう.

疑うポイントは何であったのか?

 

母児間輸血症候群では

・胎動減少を主訴とすることが多い

・MCA-PSVの上昇が胎児貧血の予測に繋がる

・CTG所見は発症早期では異常を示さないことも多くあり,非特異的とされる(pitfall)
 胎児貧血ではサイナソイダルパターンを示すことがあるが,実際に出現する割合は低いという報告がある.つまり,偽陰性が多い.よって,それが無いからと言って否定はできない.

・AFPの上昇は母児間輸血症候群と関連するとされる

・診断にはKleihauer testsやサイトメトリーがあるがどちらも施設や時間帯によっては不可能である問題がある

 

 

 

さて,今回の症例のポイントは

・胎動減少という主訴から母児間輸血症候群という比較的稀な疾患を想起できること.

・そのためにMCA-PSVの測定やAFPの採血をすることである.

・CTGは非特異的であったり,時間が経たないと異常が出てこないパターンがある.

 よって1回のreassuringで安心せず繰り返し再検査すべきだろう.

・胎児のwell-beingの評価としてBPSをみることが重要である.

 

 

脳性麻痺や死産をなくすためには鑑別として覚えておきたい疾患

「母児間輸血症候群」であった.