
2025年度入学(2024年8月実施)の東京大学SPH(公共健康医学専攻)の入試に合格しました。
私はいわゆる内部生ではなく、かつSPHに知人がいないため完全に一人で対策をしました。対策法に関して気が付いたこと・自分なりのTipsをまとめておきたいと思います。
Public Healthを目指す気持ちがある人に広く入学の門戸が広がるといいな、という思いがあります。
(※私の一個人の意見ということで割引いてください。誤りもあると思いますが、ご容赦ください。また、質問・誤りがあれば遠慮なくご指摘いただきたいです。端的に伝えるために断定調・冷たく・偉そうな文章になってしまっていることも先に謝っておきます!)
アウトライン:
- 入試全体を通して言えること
- 英語
- Basic Public health(択一)
- Basic Statistics
- Subject
- 小論文
- 面接
・入試全体を通して言えること:
- SPHとして何を求められているのかという広い視点が必要です
- 求めていることに基づいて、メタ的な視野を入れて勉強・解答する
- 近年の傾向:細かい枝葉の知識よりも根本的な考え方・フレームワークを学んでいるかどうかを問われている
- 上記を考慮し過去問やってください(過去問は大学院の公式HPに案内があります)
- よって、過去問の丸暗記では解けない~ギリギリの戦いになるでしょう
- 英語・公衆衛生一般知識・統計基礎を広く知っていることが求められますが、想定される配点・スキルアップに要する労力から「英語」を中心に勉強する方がよいかもしれません(英語に自信がある人以外は)
上記(入試全体を通して言えること)は書いてしまとふわっとした内容ですが、すごく重要なことだと思います!
・英語:
- 私がやったこと
①過去問(手に入る年度全て)を(深く)3周
②Lancetを読む
③ワードクエスト ──世界とつながる上級英単
- 入試対策として最も有名なブログである「東大SPHを目指す貴方へ」をみますと、採点比率が高いと考察されております
- 英語を重点的に勉強する必要があります:
①英語を解く力は直線的には伸びない・時間がかかる
②入試の一番最初の科目ということもあり、ここでつまずいて心が折れないため
③英語力を身に着ければ(択一の知識問題のように知ってるか知らないかではなく)安定的に点数をとれる可能性がある
④Subjectの精神保健などにも通用する力になる
⑤入学後も必ず必要になる、その後のキャリアでも重要
- 私はSPH入試の英語は難しいと思います(特に近年は)
なので、難しいと感じる方は焦らず、時間をかけて対策してください
- 具体的な対策としては、過去問を解いてください
これはTOEICやTOEFLとは別物であると思います
英語をただ読むのではなく、英語で書かれた「論文」の内容を理解する必要があります
- 過去問は時間を測って解くことで、いかに時間が足りないかがわかると思います
- 過去問の答え合わせを軽く済ませるのではなく、より深く、なぜそれが正解になるのか、どうしたら解けるのかというロジックに拘って復習を繰り返してください
これは言葉にしてしまうとシンプルなのですが、一筋縄にはいかない、非常に重要なステップですし、時間がどうしてもかかります
- 基本的にはパラグラフライティングで書かれているので、その概念を知らない方は調べていただき、それを意識して読んでください
- 入試で用いられる英文はLancetやNEJM等の論文のIntroductionであることが多いです
- 論文のIntroductionにはある程度の決まった流れがあります
よくあるパターンは「●という事実がある。しかし(However)、▲という問題がある。その問題について深く論じる。」の流れです
また、文章の中での対比構造などに気が付けるかがポイントです
- 「単語」は過去問に出てきたわからない単語を一つ一つ覚えることで、かなりの英語論文に用いられるものをカバーできます
私はプラスでLancetの論文で単語を勉強するようにしました
単語帳は必要ないかもしれませんが、私は「ワードクエスト ──世界とつながる上級英単──」も目を通しました
全く単語に自信がない方はTOEFLの単語帳を、絶対出ないだろう領域(ex 地学とか)の単語を除外しながら勉強するのが良いかもしれません
- 2025年度は大問3題、難易度・文章量共に大問1>>>2=3です
大問1で焦ってしまい、時間がとられてしまうと、点をとるべき2と3に悪影響を及ぼす可能性があります
よって、まず大問1-3を眺めて、2と3から解くべきと判断すべきですし、これには1-2分しか要しないでしょう ”必ずしも頭から解く必要はない”という受験でしばしば言われる戦法です
- 去年(2024年度)の試験と同様ですが、筆記力を求めているように感じます
これはアウトプット=論文を書ける力を試していると考えられます
そのため、自分なりの解答をしっかり書きながら過去問を解くべきでしょう
本番でいきなり書けるようにはならないです
- 2025年度の大問1は今までにはない長文でしたし、内容も難しかったです
もしかすると今後も難問が一つは組み込まれるのではないかと思います
難問が出るんだ、と腹をくくるしかないと思います
(ただし大問2-3で点数は稼げました)
- 勉強期間としては、私は半年前から取り組みました
なるべく週に数日は英文に触れる時間を設けました
この入試の勉強のおかげで英語の論文を読む力がつきました
- また近年の傾向としては、環境に関する英文が出ているように思います
Lancetの最新の環境疫学の論文のイントロだけでも読むようにすると慣れるでしょう
(今後出題される保証はないのですが、疫学のうちホットな領域です)
- 契約してないと読めないものがありますが、Lancetnの「Series」は読みごたえがあって、個人的に過去問以外の読み物として選んでました⇩
Series from The Lancet
・Basic Public health(択一):
- 正直、これはどう対策すればいいのかあまり明確なことは言えません
- 私は過去問や「公衆衛生がみえる」などやり込んだつもりですが、それらでカバーされないものがいくつも出題されました
- 印象ですが、各SPHの先生方のご専門の色が強く出ているように感じます
- また各先生方の持たれる公衆衛生学的な考え方、フレームワークが反映されているように思えます
これはぱっと問題を見ても気が付かないのですが、実は特定の制度への問題意識を持って出題しているのかな、、、など、5択問題の背景に公衆衛生学的なストーリーが考えられます。なので、もし知識としては知らなくても、メタ的に考えてこれが正解だろうというような対策はできます
- とは言え、どこまで勉強すればいいのか、という感じになってしまいますが、
①過去問とその周辺知識
②重要な最新の統計データ(人口静・動態、国民健康栄養調査など主要な物から、世界の統計)
③各先生方の専門(これはHPやシラバスなどからご調査ください。他にも調査する方法はあるでしょう。)
④厚生省HPの資料
⑤後述するSubjectの内容と重複する部分
を勉強するかたちになると思います
- 印象としては、近年の択一問題は、細かい枝葉の統計データよりは、ビックピクチャー・メジャーな統計結果を問うているように感じます
・Basic Statistics:
- これは対策しただけ素直に点数に反映される貴重な範囲だと思います
- 私は皆さんやられているように「統計学演習」をやり、それから過去問を解きました
- また最近はyoutubeにたくさん統計の解説があるので、それも活用しました
- 私はもともと統計検定2級を持っております。しかし、統計検定2級の内容と被る範囲もありますが、異なる範囲もだいぶあるので、統計検定2級の勉強はしなくてよいでしょう(してもいいですが、効率の面では悪いかもです)
- 相関係数、決定係数、回帰、残差プロット、t検定、カイ二乗検定、ポアソン分布、指数分布、幾何分布、負の二項分布あたりは最初は難しいですが、慣れればそこまで難しいことは求められてないと思います
- 帰無仮説、α・βエラー、標本誤差・標準誤差・標本偏差あたりはややこしいので注意して勉強しましょう
- やる必要性は微妙かもしれませんが、私はやることが無くなったので、
東大大学院情報学環・学際情報学府 生物統計情報学コースの過去問もやりました
- Subjectの統計は難問があるので、余程統計に自信がある方以外は、Subjectの統計は全く別物と考えるべきだと個人的には思います
- 統計ばかり勉強することには注意すべきでしょう
なぜなら、配点の上ではそこまで大きく無さそうだからです
・Subject:
以下は個人的な難易度を★~★★★★★で表現してます(雰囲気です)
- 想定以上に時間が無いですし、瞬発力でどの科目を選ぶかがキーになるので、よく対策を自分なりに考えておくべきでしょう
- 私は、本番で最後の最後までどの科目にするか迷って、ラスト8分くらいで一つの科目を変え、かなり焦りながら、手が壊れそうな勢いで汚い字を書きなぐることになってしましました
- 私は勉強をする時間があったのと、保険をかけたかったので統計以外は全て勉強しました
ただし、中途半端にたくさん勉強すると意味が無いので、時間が無い方は
少し余裕を持った科目数に絞って勉強する方が良いかもしれません
・疫学、予防、調査法:★★~★★★
- 対策しやすいと思いますが、ときおり難問が出ます
部分点はとりやすいのかなと思います
- 調査法に関しては社会疫学と臨床疫学のどちらの視点も学んだ方がよいでしょう
以下で勉強をしました
- 佐々木先生の「わかりやすいEBNと栄養疫学」
- 村上先生の「基礎から学ぶ栄養学研究」
- 基礎用語 - 社会調査NOW
・教育:★★~★★★
- こちらも部分点はとりやすいように思いますが、逆に満点の解答を作る自信はないような年度もあります
- 個人的には、どこまで書いたら高得点なのかが判断できず意外と勉強する上で苦戦しました
以下で勉強をしました
- 石川先生の「保健医療専門職のためのヘルスコミュニケーション学入門」
- 「一目でわかるヘルスプロモーション : 理論と実践ガイドブック」
・精神保健:★★
- 英語力と精神保健の基礎的な考え方ができていれば解きやすいと思います
- Lancetの精神保健関連の論文を読むことが対策になります
使われる単語も限られます
- 枝葉の知識ではなく、考え方を自分の言葉で表現できることが大切だと思います
・医事:★~★★★★
- 知っていれば簡単、知らなければ全く手が出ない感じです
- 解剖、感染症法、医療安全、臓器提供、虐待あたりは勉強しておいて損はないと思います これは択一にも活きますので
- 範囲としては広くは無いので、個人的には対策する価値があると思います
- 知らない分野が出たらすぐにあきらめもつきます=試験時間節約になります
・倫理:★★★★~★★★★★
- 過去問と被りません
- 私は「入門・医療倫理I 」をかなり読み込んだつもりでしたが(単純に内容が非常に面白かったので)、本番で撃沈しました(倫理を選択する気満々でページを開いたら用語の3つくらいがわからなくて固まりました)
- 例年の問題をみると1-2個は知ってるかな、という感じですが、4-5個を答えられるようになるにはいったいどれほど勉強すればいいのかわかりません
- 個人的には、時間が無い人にはおすすめしない感じです
(入試という観点以外では非常に面白く、勉強できたことはプラスになっております)
・情報:近年は★★~★★★(昔は★★★★★)
- 結構前の過去問は全く手が出ない感じですが、近年の問題は比較的解きやすいように思います(昔のようなエンジニアリング的な問題は出てない)
- 医療情報の最近のトピックと、その問題について知っていれば、対策できるような印象があります
- 厚生労働省のHP上の関係ありそうなスライドを片っ端から見ました
細かいこと(数値)は出る可能性が低いと思うので概念を知っていることが重要な気がします
- ただし、教授が退官されるので、今後どのような問題が出るのについては予想ができません
・統計:★★★★★
Subjectの統計に関しては私は対策を書けません
統計検定2級を持ってるくらいでは太刀打ちできませんでした
Basicとは次元が違う印象です
統計が得意な方にとっては、自信を持って解答できる範囲なんだろうなと思います
(採点基準の明確さという観点から)
・小論文:
- とにかく時間との勝負です、時間を計って実際に書いてみましょう
- 私は1800字程度書きましたが、もっと少ない人もいます
- 小論文の簡単なお作法は教科書など使って抑えましょう
教科書はなんでもいいように思います
- 引用元の文献は私は8個書きました(参考文献:[1~8] 著者名. 雑誌名. 出版年. のような感じで文末にまとめましたが、これは正解はないかもです)
- できれば誰かに見てもらうこと、そして一度書いたものは時間を経て見直してみることを強く、強くオススメします(なので、早めに取り掛かって仕上げちゃった方がいいです)
- 頭から読んだときに、内容の理論的整合性が取れているかに注意が必要です
- 私は字をきれいに書くことを本当に苦手です。本番できれいに書くことを心がけたつもりが、実際に書き終わって全体を眺めたときにあまりに自分の字が汚くて変な汗をかきました・自分のあまりの字の汚さに大きく減点されてしまったらどうしようと不安で仕方なかったですが、採点では内容相当?の点数をいただき、ほっとしました
・面接:
- 自己紹介、志望理由、なぜ公衆衛生を学びたいのか、なぜ東大SPHじゃないといけないのかを言えるようにしましょう
- そのためにはSPHの各専門分野のHPなどよく勉強しておきましょう
- 小論文についての質問 プロ中のプロからのつっこみです、覚悟しましょう、、!
我々受験生は完璧な小論文を書ける可能性は低い&東大教授がそれをチェックする=。。。!
- いずれにしても「自分はSPH入って積極的に学ぶ姿勢がある」「強い動機がある」「態度や礼儀」「基礎的な公衆衛生学的な考え方を持ってる」そのあたりを見ているように感じます
- 小論文の質疑では先生方からのご指摘に対して変な言い訳をしたり、失礼な態度はとらない方がよいでしょう(当たり前ですが)
- 大勢の先生方が居るので、それに圧倒されてしまいますが、できるだけ、はきはき・遠くの席の先生にも聞こえるような声の大きさで話しましょう
以上、かなりの長文になってしまいましたが、東大SPHを目指す方の助けになればと思います。
もし、ご質問・ご相談などあれば遠慮なくご連絡ください!
感想ですが、受験勉強の最初の頃は暗闇の中を歩いているような感覚で、地図が無いので今自分がどこにいるのか、そしてどこまで道が続いているのかわからず、かなり不安になってました。そんな中でこれまでの先輩方が書き記してくださったブログやNOTEが目印となり、少しづつ光が見えてきたような感じでした。これから受験する方も不安でいっぱいだと思います。就職、家族や職場の状況から背水の陣の方もいるでしょう。そんな方の少しでも手助けになれば幸いです。
以下は私が受験の際に勉強させていただいた先輩方のブログやNOTEです:
東大SPHを目指す貴方へ
東大SPH受験記 : 夜間飛行
[2020東大SPH入試] 私が合格するためにしたこと|カンマくん
2024年度入試 東大SPH合格体験記|たなお
看護師の東大SPH受験体験記|Risa
看護師の東大SPH受験体験記(その1)|ベンゼン
東大SPH受験体験記/戦略記・書類審査編|蟻路屋の放牧場
エリザマス|note
東大SPHに合格した薬剤師の受験記録: 東大SPH受験勉強(詳細)
https://medsurgblog.com/177/
追記:
点数開示が届き、全体で8割程度とれてました!
点数の分布が例年同様なら、ある程度余裕を持った点数になると思うので、この記事の内容に少し自信が持ててよかったです!
よりSpecificな内容はここではお答えできませんのでメッセージをいただければ幸いです。