ある産婦人科医の備忘録

産婦人科医(医師6年目)の臨床、研究、考えについて

若手医師による臨床技能・フレームワークまとめ

医師6年目に到達した自分がこれまでに学び、経験してきたことから

積み上げ、精錬した臨床技能・フレームワークまとめてみる。(大袈裟)

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初期研修医のときにとある内科医から教えていただいたフレームワークが今も役立っている。

      フィジカル/メンタル/ソーシャルに分けて考えよ

というものである。

 

・フィジカル:

 これは臨床医なら言うまでもない、いわゆる病気をみる、というようなもの。

 バイタル、身体診察、検査、ADLなど。

 自分の専門分野ではない領域に関してはコンサルテーションを惜しまない。

 

・メンタル:

 精神疾患のみならず、患者の性格・思考・認知機能を含む概念である。

 心配性な方、楽観的な方などでかなり接し方、説明方法が変わってくる。

 

・ソーシャル:

 家族、家庭環境、経済状況、職業、地域制、宗教など。

 特に家族の性格や思考には注意が必要である。
 私は家族を含めて、広義の意味で”患者”だと考えている。

 そして患者のみならず、その時々の医療提供側の状況も重要である。
 例えば、人手でどれだけいるか、設備はあるか、夜間か、週末か、
 他の医療従事者のスキルや思考、方針も加味しなくてはならない。
 ここが中々難しく、かつ重要である。

 

そして、私はここに”コスト”も追加して考えている。

・コスト:

 金、時間、人員、労働力など。 「優先順位」にも多く関わる。

 コストが低い検査はなるべく惜しまないようにすべきと考える。

 その代表例が超音波検査である。超音波検査ほど身を救う検査はない。
 侵襲度も低く、自分でできれば人員も不要である。

 また診療にかける時間や優先順位を瞬時に判断していくことも現場では重要である。

 

 

具体的な例として、

心配性な方では検査をするハードルを下げることある。
検査を受けることで安心感を与えることは大切だと思っている。
思いがけない有害事象が発生したときの信頼度が変わる。
もちろん侵襲度が高く、明らかに不要な検査は行わない。
また検査にかかるコストも考慮する。

 

家族への説明も決して軽視してはいけない。
患者本人に説明したからOK、ではないのである。
家族までも理解と納得ができるようにすることが重要である。

 

 

また、私が常日頃重視しているのは医療安全的視点である。

患者を守ることに徹底することが己を救う。

そのためには上記の4要素(フィジカル/メンタル/ソーシャル/コスト)を意識した

抜けのない診療をすることが重要である。

また「適切なカルテ記載」「適切な説明」が必須である。

 

・カルテ記載

どんなにがんばって診療をしてもカルテ記載がなければ、無かったことになってしまうのである。医療訴訟において、カルテ記載が詳細で適切であることは、診療が適切であることの判断材料になっている。

後輩ができて、カルテ記載方法も正解があるわけではないので、意外と難しい分野だと最近は感じるようになった。

抜けが多いのは論外だが、詳細過ぎて冗長な記載をするのも良くない。少なくとも詳細さが重要な場面で長い分面を書くのでれば、ショートサマリーを設けるべきである。

また、意外と抜けがちなのが陰性所見の記載である。
陰性所見を記載することで診療の妥当性を示す場面は多々ある。
例 「●●の症状、所見がないので▲▲の方針とした。」

どんなに医学的に適切な診療をしていても、予想外の有害事象は発生しうるのである。
これは安全運転をしていても交通事故に遭うようなものである。確率の問題だ。
よって、私は今の時点で何の問題もなくても、仮に有害事象が未来に発生し、
その時に後方視的に診療録を見たときのこと考えてカルテ記載をしている。
またこの考え方は、カルテ記載のみならず、診察、検査、治療の方針を考える時にも
意識するようにしている。

 

そのような観点からは、患者の帰し方も重要である。
これは別の言い方をすれば、どのように説明したか、である。
よく「有事再診」という記載をみるが、これでは訴訟において説明不足と判定される。
また再診を入れていたとしても、しっかりと説明したことをカルテ記載すべきである。
「●●●のような症状が出現してきには、連絡・受診していただくようご説明した。」
というように具体的な内容を記載することが重要である。
日頃から身に着けておくことで抜けがなくなる。テンプレートを作っておくのも
漏れなくするためには重要である。

・患者、家族への説明:

ここで既に記載したが、「適切な説明(いわゆるムンテラ・IC)」も重要かつ
難しい分野の一つである。
起こり得る合併症、副作用についてはなるべく漏れなく説明をすべきであるが、
限られた診療時間では全てを網羅することは不可能なため、重要度の高いものから
優先して説明し、細かなものはパンフレットや添付文章を渡して、軽く説明するに
留めしかない。

カルテ記載と同様で詳細過ぎたり、優先度の低い説明をダラダラとするのも良くない。
患者にとって重要なことは何かを意識すべきである。たまに病態生理を詳細に説明している医師をみるが、多くの患者にとっては、それよりも重要なことが多々あるだろう。

また可能な限り、診療に方針における選択肢は提示し、患者、家族に決断していただくことが重要である。しかし、選択肢だけ提示し、患者や家族が悩み、困ってしまう例をみうけることは多々ある。選択肢は提示するが、医師として、患者、家族、社会の状況などを考慮して、これが最適なのではないかという考えを述べることは重要である。

上記した患者の帰し方においても、どのような場面では受診すべきと具体的に説明することが重要。

 

その他、重要なこととして

・身だしなみ(信頼度に関わる)

・適切に詳細な指示簿

・他の医療従事者に「●●と指示した。」というカルテ記載

・処方における禁忌、併用薬の確認

・アレルギー

なども基本だが、忘れてはならない。

 

 

既に記した通り、どんなに医学的に適切な診療をしていても、予想外の有害事象は発生しうるのである。有害事象が発生したときには、後方視的に妥当性が問われる。しかし、訴訟の場面では司法に判断が委ねられる。現場とは考えが解離するのである。
リアルワールドにおいて不確実性を考慮した意思決定が必要だ。

 

 

まとめ

・フィジカル/メンタル/ソーシャル/コスト 
 のフレームワーク診療

・適切なカルテ記載

・適切な患者、家族への説明

・リアルワールドにおける不確実性を考慮した意思決定