ある産婦人科医の備忘録

産婦人科医の臨床、研究、考えについて

感度分析 E-value について 

感度分析 Sensitivity analysis という広い概念の中で

E-valueと呼ばれる定量的に判断できそうな指標がある.

 

詳細は他のブログで素晴らしい日本語でのご解説があるので,
本記事では個人的な疑問点を述べるに制限する.

(お二方とも非常に素晴らしいブログでファンである)

www.krsk-phs.com

 

riklog.com

 

E-valueとは

既に測定できている交絡因子で調節した上での
暴露とアウトカムの関連(リスク比)が無くなるには
未測定交絡因子がある値のリスク比(=E-value)で暴露とアウトカムに関連している必要がある

というものである.

 

簡単にいうとE-value以上に暴露とアウトカムに関連してそうな未測定交絡因子がありそうなら,研究の結果が変わってしまうかもよ

的な雑な解釈である.

 

E-valueの計算もすごく簡単で,以下で求められる.

E-value = リスク比 + sqrt[リスク比 × (リスク比-1)]

 

上記の式を眺めていただくとわかるが,リスク比さへわかれば求まるのである.

さぁこれは便利だ! と短絡的には考えてしまうのだが以下に問題点を記述する.

 

式を見れば一目瞭然だが,メインの解析で求まったリスク比が大きければ大きいほど,

E-valueは大きくなる=未測定交絡だけでは説明つかなそうだね

となるのである.

逆に言うと,メインの解析で求まったリスク比が小さいと,

E-valueも小さくなり,「それくらいのリスク比を持つ未測定交絡ってありそうじゃね?」と解釈したい気持ちになるのである. これが問題と思う.

 

具体的には

薬:A と アウトカム:入院 の関連を検定すると

リスク比:1.94 でした.

すると,E-value:3.29 と求まる.

 

もちろん考えられる未測定交絡を過去の文献や臨床的な視点から考慮し,

そのようなリスク比を持ちそうな未測定交絡が無いならよいのだろうが,

リスク比がもっと小さくなればそれだけE-valueも小さくなる.

それくらいの未測定交絡ありそうじゃねという気持ちになってくるのである.

 

出典もE-valueにカットオフはないとしているが,

なにせ値で出てくるのでその大小で判断しそうになるし,

大小で判断してそうな論文も見受けられる.

 

リスク比は小さいが真に関連があるものは確かにあるだろうし,

その真にあるリスク比によってE-valueを測ると小さく出てしまうのは,

上記のような短絡的な解釈(E-valueが小さい≒未測定交絡の影響ありそうだよね)に

なり兼ねない.

 

E-valueを解釈するには既報や臨床的な判断が必要になるし,

既報と今やっている研究での投入した交絡因子が合致しなければ,

その既報の未測定交絡によるリスク比もそのまま解釈できないだろう.

かつ,臨床的判断とは言ったが,臨床的な判断でリスク比なんてわからんだろう.

 

 

上記がE-valueも問題点で,E-valueについてしっかり理解しているならよいと思うが,

単純に値の大小だけで判断されては困るということだ.

 

 

 

ちなみに他のE-valueの問題点を述べたものは下記になる.

www.acpjournals.org